あこがれの翻訳家、通訳ガイド。あなたの夢をかなえるための教材、参考書をご案内します。
現役翻訳家の手になる翻訳指南書だが、花も実もある充実した著作である。従来の教科書的翻訳演習に終始した単なるノウハウ書ではない。著者の翻訳に対する信念や実作業上でのエピソードを織り交ぜつつ、本人の訳書から実例を引いて解説をしている。筆者の翻訳に取り組む姿勢は、真摯でありながら柔軟で、訳出の実例解説は無論見事な出来だが、その実践者としての翻訳論を読むだけでも、非常に興味深く、楽しめる内容と価値を備えている。また、翻訳小説と言えば、一般には「生硬な日本語のぎこちない小説」というイメージが強いが、筆者の訳出例に当たると、それは単なる偏見であるのが実感せられ、また、そうした既製観念を打破する訳書を次々と世に送り出している著者の揺るぎ無い実力、言葉の力を見せつけられる。特筆すべきは、「外国語の小説を日本語に翻訳するなら、その翻訳もまた、立派な日本語の小説の体を成していなければならない」という著者の確固たる信念である。最近の訳出作品で言えば、厳密に選り抜かれ研ぎ澄まされた日本語と、徹底的に感傷を排した緻密で硬質な文章が、訳文の日本語世界を文学の域まで昇華せしめている、「パナマの仕立屋」(ジョン・ル・カレ/講談社)。 悪夢の連鎖のようなイメージの輻湊する、毒気と悪罵に満ちた暴力小説を、実はその底部に流れる救済への祈りと叙情までを巧みにに訳文に掬い取り、型破りの荒々しい日本語で訳し切った、「神は銃弾」(ボストン・テラン/文春文庫)、など著者の精神を実践した訳書を見るに付け、その主張には深く首肯させられる。やはり、優秀な現役翻訳者ならではの、他に類を見ない見事な翻訳指南書である。ただ、出来れば巻末に著者が翻訳した代表的な作品だけでもよいから、読者へのレファランスとして、ご本人の手になる訳書の作品リストを入れて貰えていたなら、もう外に言う事がない。
とにかく、翻訳学習者には役立つ本です。どんな辞書を揃えればいいかといった基本的なことから、インターネットの検索サイト、果ては英国とニューヨークの警察組織についてまで教えてくれます。「自分の思うままに訳し、翻訳を愉しむ」ことが重要という著者の考えには共感できますし、何よりも文章がおもしろくてあっという間に読めてしまいます。最後に短篇のミステリを丸ごと訳そうという章があり、これは挑戦してみたらものすごく勉強になると思います。ところどころにはさまっているエッセイもおもしろくてグッド。
『ミステリ翻訳入門』を読んで
著者は,売れっ子翻訳家の田口俊樹氏。殺し屋ケラー・シリーズに代表されるハードボイルド・ミステリー作家ローレンス・ブロックなどの名訳で知られる。主として,気の利いた例文を元に,翻訳のポイントを解説するという参考書形式になっている。それに加え,翻訳のプロとしての氏の日常を垣間見ることのできる,軽妙なエッセイの数々も掲載されていて,読み物としても楽しめる。ミステリに焦点がしぼられているが,翻訳全般に興味のある全ての人にお勧め。
翻訳物が好きで、とりわけ田口さんの作品のファンです。 |
売れ筋商品
このページの情報は 2006年4月16日22時3分 時点のものです。 |
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